大井川知事による

4年間の茨城県政をどう見るか

1 「いのち輝くいばらきの会」の基本政策

私たちは今年の知事選で、コロナ感染対策を抜本的に改善し、大型開発優先から県民のいのちとくらし応援の県政に転換し、東海第二原発の再稼働を止め、誰もが安心して豊かに暮らせる茨城県をめざすことを基本政策とします。

その柱は、①くらし応援と結びつけて、地域経済の振興・雇用を増やす、②教育・福祉予算を増やし、子どもからお年寄りまですべての県民が安心して暮らせる茨城を作る、③東海第二原発再稼働を止め、省エネ・自然エネルギー推進で、新産業と雇用の創出につなげる、④憲法と地方自治をくらしのすみずみにまで行き渡らせる、の4点であります。これらの基本政策は、コロナ禍にあって速やかに実施すべき課題となっています。

以下に、この4年間の大井川県政の問題点を記します。

2 大井川県政の問題点 

(1)新自由主義政策の国政に追随し、大企業のための県政

① 「活力があり、県民が日本一幸せな県」を基本理念に掲げ、2018年3月に「茨城県総合計画(2018年~2021年)」を改訂した。計画推進の基本姿勢として、「県は、挑戦する県民の皆さんを応援し、支え、新しい時代をともに切り開いていきます」「スクラップ・アンド・ビルドに不断に取り組むとともに、本県を大きく飛躍させるために必要な事業には重点的に予算を配分するなど、財源の有効活用や『選択と集中』を徹底します」と述べている。
この4年間の中で、大井川知事は「選択と集中」をキーワードにして、企業等の収益の増大に力を入れてきた。また、県庁の機構改革を進めて、営業戦略課、産業戦略課など大幅な課名の変更も行って、県民福祉の推進から転換する姿勢を鮮明にしている。そもそも、「必要な事業」や「選択と集中」の基準を誰が作るのか、県民の要望をどのように聞き取って生かしていくかが問われなければならない。
しかし、今年の県民の意見を聞く「ネットリサーチ」では、大井川知事は東海第二再稼働に関する項目に「考えていない」と回答している。加えて、県民サービスの充実や中小企業や小規模事業者、社会的弱者を含む圧倒的多数の県民に対する支援の充実などが「選択と集中」から外されて支援の対象になっていない。
② 「茨城県総合計画」の企業誘致では、工業団地分譲価格の値下げや本社移転に最大50億円の補助金制度創設などによって、工場立地面積は2年連続で日本一と自賛している。2021年度の当初予算では、新たな大規模工業団地の造成(つくばみらい市内、70 ㌶、総事業費 200 億)が新設された。
しかし、企業誘致や大規模工業団地の造成によって、大企業支援の成果だけが強調されて、正規社員の雇用がどれだけ増えたか等は明らかにされていない。

(2)医師数・看護師数は全国最低水準から脱却できず、医療機関の統廃合を推進

①大井川県政は、12あった保健所を2019年11月1日から9保健所に再編・統合した。 常総保健所が廃止となり、2保健所が支所になった。「保健所を再編統合することで、 保健所機能の強化を図ります」と言っていたが、台風19号風水害やコロナ感染の拡大などで、保健所の再編・統合が救助の遅れなど問題をより深刻にしてしまった。しかし、保健所の増設などの話はまったく出されていない。
②土浦協同病院「なめがた地域医療センター」は「入院病床を全て休止する方針を決めた。外来診療に特化するため事実上、病院としての機能を終える。元々悪化していた経営環境を新型コロナウイルス感染症が圧迫、傘下6病院の共倒れを防ぐ手当てに踏み切った。現在でも全国最低クラスの鹿行地域5市の医療体制は、さらに弱まることになったが、大井川県政は具体的な支援を行っていない。
③大井川県政では、医師確保の取り組みを進めているが、具体的な改善になっていない。 現在も、茨城県の医師数・看護師数は全国最低水準を脱却できていない。

 

(3)教育への介入が教育行政を歪めている 

①2019年2月に、県教育委員会は10校の中高一貫校の開設を、市町村教育委員会や当該高校に事前の説明や合意を得ずに計画を発表し、強行した。しかも、計画を教育長ではなく、大井川知事が記者発表した。中高一貫校の校長の採用に当たっては、公募制を導入して民間人校長の採用も可能にした。 

②友部高校のIT専門科の導入やつくば工科高校の科学技術科クラス増などの新たな「改革実施プラン」を教育長では無く大井川知事が記者発表をしている。 

③この間、特別支援学校の過大・過密が大きな問題になっているが、大井川知事は過大過密の解消のために新たに特別支援学校を新設しようとせず、特別支援学校の増築によって不足教室の解消だけを問題にしている。特別支援学校の教育条件を改善するためには、特別支援学校の設置基準を策定し、増築では無く特別支援学校の新設が求められている。 

④2019年度から、私立高校の経常費補助をそれまでの8割に削減し、2割について配分基準を変更している。その配分基準は医学部や有名大学への進学実績等を査定するもので、中小規模の私学では経常費がカットされ、多くの私学では教育内容が歪められてしまう危険性が高い。 

⑤大井川和彦知事の主導で、つくば市内に新たな通信制・単位制高校「S高校」が、2021年4月に開校した。大井川知事は「(県は)連携を通じてたくさんのことを学べる。教育改革の大きな柱として位置付けていきたい」と述べているが、たくさんの通信制・単位制高校が設置されている茨城県では、本来ならば通信制・単位制高校の競合では無く、高等学校全体の教育条件整備に県として力を入れる必要がある。また、そもそも県知事が民間教育法人の運営にかかわることが問題である。 

(4)「儲かる農業」支援だけで、家族農業支援を口にせず

①国連は、「国際家族農業の10年」として、持続可能性が高く、現に農業の大半を担っている小規模家族農業にこそ支援をすべきとしている。大井川県政は、国と同様にこれを無視し、「儲かる農業」をスローガンに、大規模経営や規模拡大する経営などに支援を選択し集中している。
②食料輸送による温室効果ガスを抑制することが国際課題となり、また、コロナ禍で輸出規制する国が相次いだことから、各国が食糧自給率を高めることの重要性が浮き彫りになっている。大井川県政は、国と同様に海外への農産物の輸出に力を入れているが、増えたとしても産出額全体の1%程度に過ぎず、収益性が高いわけではない。
③学生や困窮者への食料支援が進められているが、行政支援は全く進んでいない。コロナ禍による米価暴落を食い止めるためにも、行政が米を買い上げて、学生や困窮者に食 糧支援を進めていくことが喫緊の課題になっているが、大井川県政からそうした取り組 みは全く聞こえて来ない。

(5)県民の東海第二原発再稼働反対の声に耳を傾けず

①2020年5月に、「県民投票の会」が8万6703筆の東海第二原発の再稼働の賛否を問う県民投票条例を求める署名を大井川知事に提出した。大井川知事は、6月議会に条例案を提出する際に添付した意見書で、条例案に対する賛否を明らかにせず、県民から意見を聞く方法について「県民投票を含め様々あり、慎重に検討していく必要がある」と、県民投票に後ろ向きとも取れる姿勢を示した。
②2021年3月18日に水戸地裁で東海第二原発運転の差し止め判決が出された。大井川知事は「司法の判断であり県は当事者でないことから、コメントは差し控えさせていただきます。東海第二原子力発電所の再稼働の是非については、安全性の検証と実効性ある避難計画の策定に取り組んだうえで県民に情報提供し、県民や避難計画を策定する市町村、県議会の意見を聞きながら判断していきます」というコメントを発表した。
しかし、茨城県は当事者でないという発言のおかしさもさることながら、県民に意見を聞くと言い続けながらいつどのような方法で意見を聞くかを全く明らかにしていない。地裁判決は、県が策定した広域避難計画の実効性を否定し、東海第二原発の運転を禁じたのであって、県は裁判の当事者ではなくても、避難計画の当事者であり、東海第二原発の再稼働に同意するか否かを問われる当事者である。大井川知事は、判決を真摯に受け止め、実効性ある避難計画の策定が不可能であることを認め、東海第二原発の再稼働を認めないことを速やかに表明すべきである。
③福島第一原発の汚染水の海洋放出については、当初大井川知事は反対を表明していたが、現在は容認するような態度に変わってしまっているが、その理由を明らかにしていない。